「わ~~っ!!」
真奈ちゃんの歓声が耳に心地よい。
テーブルの上に並んでいるのは、昨晩お母さんと私が頑張って作ったサンドイッチが盛り沢山。
「ずいぶんあるねぇ…ひょっとしてあたしと龍っちの分もとか?」
「ええ。余ったらおやつにしてもいいし、張り切って作ったわ!」
本当は龍治と鏡子が来るのは昼過ぎのはずだったから、ここまで作る気はなかったんだけど、お母さんが…
「こういう時は多目に準備した方が良いわよ」
と主張したので4人分+αという結構な量を作ることになった。
ま、まあ、だから気兼ねなく2人を早く呼べたっていうのはある。お母さんグッジョブ!
「一応自分の分は買ってきたけど…」
「僕も家に有ったのを適当に持ってきた」
と言ってそれぞれ袋を開けてテーブルの上に並べる。
「すご~~い!!」
それを見て真奈ちゃんが更に喜ぶ。おにぎりやら菓子パンが追加されて、ちょっとしたお祭り状態だ。
「じゃあ、皆で好きなのを食べよっか♪」
「「お~~っ!」」
私の音頭に応える2人と、
「まな、はんばーぐのがいい!」
と宣言する真奈ちゃん。
ふふっ、ずっと見てたもんね♪
・
・
・
『賊共の本拠地が判明しました』
翌日早朝、領主の執務室に呼ばれた『私』達に掛けられた言葉である。
え、昨日の今日で? というか昨夜から今朝で? どんな魔法使ったのよ領主様…
訝しげに領主を見やると、何やら達観している。
無理したんだろうなぁ…
『まあ、素晴らしいですわ♪ で、如何に対処するおつもりで?』
知ってか知らずか、称賛するマナ姫。
いや、知ってて言ってるんだろうな。頭良いもんなぁ…
『はっ、まず場所は西の街道沿いに4マイルほど進み、そこから南に2マイルの所にある、打ち捨てられた古い砦です。私自身が百の兵を率い、討伐するつもりです』
わー、領主様直率ですって。完全に殺る気ね…
『あらあら、古いとはいえ砦に正面から? それはよろしくありませんわ』
『はぁ…では殿下には何か策がおありで?』
異を唱えるマナ姫と、少し拍子抜けしたような領主様。
『ええ、砦や城にはいざという時の脱出口が必ず有るものです。それを使いましょう』
『た、確かに有りますが…何分古い砦なので、どんなモンスターが住み着いているやも…』
口ごもる領主様。それを見たマナ姫は、
『では、こうしましょう。領主殿が兵を率いて賊達に降伏を勧告する。その間に精鋭が脱出口から侵入し、賊の首魁を討つ。双方の被害が最も少なくなる良い案だと思いますが、どうでしょう?』
と言い、得意げにこちらと領主を交互に見る。
なるほど、確かにそれなら被害は…ん? 精鋭って…?
『精鋭…』
と呟きつつ『私』の方を見る領主様。
え? この流れって…
・
・
・
領主様がガシッと『私』の両肩を掴み、命がけ(比喩に非ず)で懇願してくる。
『絶対! 何があっても! 命に代えても姫様をお守りするのだぞ!?』
コクコク頷く『私』、何も言い返す余裕がない。
『でもログちゃん、シャインが死ぬと世界が滅ぶらしいよ?』
『何その究極の選択!?』
アリシアの軽い言葉(意味は重い)に絶句する領主。誰かログちゃん呼びを突っ込みなさいよ…
ここは砦の脱出口の入り口(出口かしら?)。少し離れた所に兵隊を布陣し、『私』達が突入したら降伏勧告をする手筈になっている。
「じゃあ、ここからはダンジョンということで。入るのはシャイン達とマナ姫とお付きのハーフリング2人でいいかな?」
「ひのふの…8人ね。流石にこれが限界じゃない?」
あんまり多すぎてもね。…ほら、分け前とか? あんまり言わせないでよ。
「そういえば、真奈ちゃんのお付きってどういう人達なの? 戦えんの?」
「ふぇ?」
鏡子の気付きに真奈ちゃんが不思議がる。翻訳しようかしら。
「あのね? 真奈ちゃんはお姫様だから、お世話してくれる人が2人いるの。どういう人かなーって…」
「まーくんとみーちゃん!」
おお? 幼児が食いついた!