怒らないとは言ってない

『では、魔王軍のこちら側への干渉は無いと?』

『じゃな。大河より北の人族もむざむざ負けはすまい。…安心したか? いと小さき人の姫よ』

『安心…というより歯がゆいですね。いえ、戦を望む訳ではないのですが…』

 以上、竜王とマナ姫の会話…というより会談?

 ちなみに流暢な【竜語】で!

 

「【知力】18だと追加で喋れる言語が4つで合計5つだから…現実だと何て言うんだろ? 2つでバイリンガルで、3つでトライリンガルだから…」

「マルチリンガルで良いんじゃない?」

 悩む龍治と、半ば呆れ気味に突っ込む鏡子。

「じゃあ真奈ちゃん、ついでに英語の勉強しましょうか。続けて言ってね? アイラビュー♪」

「らびゅ~♪」

「あ、マキずるい。私も…だとミートゥ~♪かな?」

「みーつ~♪」

「僕が言ったら事案になるのかな…」

 と悩む龍治。そこでまず考えこむのが理系なんじゃない?

 

 ここはお爺ちゃまの洞窟…堅苦しく言えば【竜神殿】となるのかしら?

 以前整えて貰った巫女部屋…『私』の部屋ね。で、参拝…という名の竜語授業だったんだけど…

『最初は堅かったが、随分と滑らかになっておるぞ? 独学でここまで出来るとは、大したものじゃな』

 とお爺ちゃまに褒められると、マナ姫はにっこりと笑って、

『最古の種族である竜族には興味…というより憧れてましたので、色々文献を読み漁ったからかと。魔法と関わりの深いエルフ語と共に、我ら【賢者】には必須の言語と考えております』

 え、最低でもトライリンガル? どこの国際大学出身よ(メタい)

『はっはっはっ、礼儀を弁えた賢き者との会話は心地よいな。どうじゃ? そなたも儂の巫女にならんか?』

 へ?

『有難きお言葉。ですが、小さいながらも一国の姫という身。私は国と【叡智の神】に全てを捧げたいと誓っております』

『うむ、天晴あっぱれじゃ。その誓い【叡智の神】と共に見届けようぞ。なに、あやつも文句は言うまいよ。色々貸しがあるのでな』

『まぁ♪』

 と言って楽しげに笑う竜王と姫。何この天上人の会話。

 神様ってそこまで身近だったかしら…?(←神官)

 場所は変わって【イーストエンド】の城の中。マナ姫が訪れて3日目。

 お忍びとはいえ結局滞在するのは城となり、領主様と案内役である『私』はマナ姫と夕食を御一緒してる。

 え、もちろん食事後に今日の様子を領主様に報告する必要があるからよ? 言わせないでよ…

『ご馳走様でした。ところで…』

 少し早めに食べ終えたマナ姫が、ナプキンで口を拭いつつ、なんてことの無いような口ぶりで話し始める。

『先日現れた賊の対処は、如何しているのでしょうか。領主殿♪』

 ガチャンと食器が音をたてる。や、やーねぇ領主様、マナーの悪い…(音は複数あった模様)

『え、あ、ま、まあ鋭意調査中であるというか何というか…』

 しどろもどろに答える領主。芳しくなさそうねぇ…

『あら、それはいけませんね。でしたら我が国の衛視隊を呼びま…』

『すぐさま! 即日! 調べ上げます! どうかお任せください、あっはっは…』

 マナ姫の言葉を遮り、宣言して高笑いする領主。…尻すぼみだったけど。

 もしかしなくても、姫様怒ってる…?

 

「切りが良いからご飯にしましょうか」

「ごはん!」

「偉くなるって、大変なのかもね」

「上には上が居るからね…」