姫と幼児の帰還

『では、お世話になりました。皆様に叡智の神の加護があらんことを』

 王女という立場でありながら、見送りに来た『私』達に丁寧に礼を尽くすマナ姫。

 自然と跪きたくなるわね。これが威厳ってやつかしら?

『そう言えば、こちらをお借りしたままでした。お返しします』

 そう言って銀の短剣を『私』に差し出すハーフリング男性。だが『私』は手を振ってそれを遮り、

『いえ、どうぞそのままお納めください。今回は余りお役に立てませんでしたし、お詫びという事で…』

 まだ使ってなかったしね。

『よろしいのですか?…では有難く頂戴します。姫への更なる忠誠を持って、お礼としましょう』

 と答えて男性はマナ姫の斜め後ろに戻る。うん、これで良かったわよね。

 

「という訳で、古い砦に住み着いた山賊とアンデッドを、周囲に被害が出る前に退治する事が出来ました。これにてシナリオ終了とします、お疲れ様でした」

「「お疲れ様~(パチパチ)」」

「さま~♪(パチパチパチ)」

 龍治のシナリオ終了宣言から私と鏡子の拍手の流れを見て、真奈ちゃんが真似して拍手する。あ~もう、この子はどこまで可愛いのかしら!

 感慨にふけってると、外から車の止まる音と、続けて呼び鈴を鳴らす音がした。あら、もうこんな時間!?

「御免下さ―い、真輝ちゃん居る―? 真奈迷惑かけてない―?」

 声が響くと同時に、

「ママだ―!」

 と言って部屋を飛び出し、階段を駆け下りていく真奈ちゃん。あらあら、やっぱりママが一番ね。

「本当に有難うね、真輝ちゃん。次のお年玉は期待してていいからね?」

 何という魅力的な言葉! いや、それが目当てで預かったんじゃないけど!?

「それは良いから、帰り道気を付けてね?」

 朝早く家に真奈ちゃんを預けて休日出勤、そしてこれから二時間(潤ちゃんは運転上手いのだ)かけて帰るというのだ。心配にもなろう。

「じゃあ、えーと…バイバイ真奈ちゃん」

「じゃあね、今度遊ぶ時はカラオケ行こうね♪」

「うん! バイバ―イ♪」

 庭まで一緒に見送りに来てた龍治と鏡子の言葉に返し、潤ちゃんと手を取り車に向かう真奈ちゃん。

 車に向かう母娘から、こんな会話が聞こえた。

「ママ―? まなね、まーくんとみーちゃんといっしょにおばけやっつけて、わるいこもめってして、おともだちになったの!」

「え、マー君とミーちゃん居たの? そして大活躍? 聞かせて聞かせて♪」

 うん、見事に要点をまとめたわね真奈ちゃん。

 シャイン達が完全に空気だけど、まあたまにはこんな冒険もいいでしょ!

「じゃあ、今日はもう終わりにしましょ。シナリオの後始末はまた今度ってことで」

「りょうか~い、今からやると夜になっちゃいそうだしね」

「らじゃ―」

 私の声掛けに、各々片付け始める。

 まあ、もちろん無言という訳ではなく…

「子供っていいわね~♪」

 という私の言葉に、

「うんうん、なんか元気貰っちゃったよね~♪ あ、でもマキ達はまだ早いと思うよ?」

「何が「まだ」よ!?」

「(何を言っても角が立つ気がするなぁ…)」