このイカれた世界にようこそ♪(ヤケ気味)

『旦那さんを探して欲しい?』

 と、依頼人に言葉を返す。

『はい。先日、釣りに行ったきり帰ってこないのです。どうかお願いします、お礼は少ししか出せませんが…』

 そう言って、若い婦人は革袋を差し出す。確かに多くはない。入ってるのが全部銀貨だとしても、大した額にはならないだろう。

 だが、そんなことは関係ない。困っている人を見捨てて、なにが光の神の神官か。

『わかりました。詳しい話を聞かせてくれますか?』

『ああ、ありがとうございます! 主人が向かった先は…』

 

「二つ返事で受けちゃうんだ。シャインって良い人なんだね」

 鏡子が感心したように言う。

「光の神の神官だもの、そりゃそうよ。それにね鏡子? 報酬が少な目でも、冒険に行った先で予想外に儲かるものなのよ。だから下手に吊り上げようとしないで、謙虚に受けとくのが吉ってことね」

「おお~~(パチパチパチ)」

 鏡子が更に感心したように声を出す。ふふん、これが先輩ってものよ。

「どう見ても商売の神の神官だよね」

 はいそこ、うっさい。鏡子も納得しない!

『旦那さん、どうしちゃったんだろ。泉に落ちちゃったのかな? それともモンスターに襲われた?』

 最後尾を『私』と一緒に歩いているアリシアが話しかけてくる。

『普通に考えればその辺でしょうか。まだ、決め付ける訳にはいきませんが』

 答えつつ歩を進める。向かうのは現場と思われる泉。街の南門から出て、二時間くらい歩いた先の、林の中にあると聞いた。

 道中に襲われたという事も考えられるが、まずは現場の確認からだろう。

 

「龍治、行くまでの間にモンスターとか出ないの?」

 ゲーム機だと、街の外を何歩か歩くと出てくるわよね。弱っちいのが。

「街に近いから、出なくてもいいかなって。準備してないから出ると面倒だけど、判定する?」

 うーん、面倒なら別にいいか。経験値の足しになるかと思ったんだけど…

「龍っち、普通にやってたら、どんなのが出るの?」

 興味をもったのか、鏡子が聞く。

「そうね。自分が住む街の近くに、どんなモンスターが出るのか興味あるわね」

 同意して聞いてみる。

「じゃあ、戦闘は無しで判定だけしてみるね。…えーと、広野の遭遇表はこっちだから…」

 言いつつ、脇に置いてあった青い本を引っ張り出す。え、それって高レベル用の本じゃ…

「行き先が泉だから、湿地帯でいいかな…(コロコロ)あれ? そうすると、湿地帯だから黒か… 数は…(コロコロ)あ?」

 龍治の不穏な独り言が聞こえる。ていうか「あれ?」とか「あ?」って何!?

 

『お嬢! 皆も、隠れて! 早く!!』

 パーティーよりも少し先行して偵察していたディーンが、物凄く慌てた様子で走ってくる。

『皆、こっちに!』

 近くの木陰に全員で隠れる。何事かと問う前に、視界の端に「それ」が見えた。

 

「南西の空から、大きな黒い影が四つ、ゆったりとした調子で南東に向かって飛んでいく。恐怖に震えながらもよく見ると、それは黒く輝く鱗を持つ竜、大型のブラック・ドラゴン達だということが分かった。彼らは君達に気づいているのかいないのか、特に変わった素振りを見せず、そのまま飛んでいく。…姿が見えなくなって、ようやく君たちは一息つく。そして改めて思い知ったのだ「この世界は危険に満ちている」と…」

「満ち過ぎてるわよ! なんでちょっと外を歩いただけで「ドラゴン一家お引越し中♪」に出くわすのよ!」

 満足げに語る龍治に力一杯突っ込む。

「でも、この表だと10回に1回くらいはドラゴンになっちゃうんだけど…」

「人生って、なんだろうね…」

 少し遠くなった鏡子の呟きが、部屋に悲しく響いた。