装備…の前に

『この娘は私の少し年の離れた妹でね、成人したら冒険者になりたいって言ってたのよ。そして先日、貴方のことを話したら、どうしても会いたいって…』

 途中から、ルシアの声が言いづらそうに小さくなっていく。調子に乗って話し過ぎてしまったのを、後悔してる感じだ。

 その間も、アリシアと名乗った娘は『私』を色々な角度から見つめる。憧れの対象を見るというより、珍獣を観察している雰囲気なのだが…

『ふ~ん、見た目あんまり変わんないね。普通より、ちょっとちっさいくらい?』

 カチン

『わかりました、師よ。まずはお互いの実力を確認することが必要ですよね? 訓練場に参りましょう、ええ、今すぐ』

 言いつつ気持ちを戦闘モードに切り替える。なあに『私』の武器は槌鉾メイスだ、手加減などいくらでも出来る。死なせずにその態度と胸を凹ますくらい余裕で…

『待って待って! そ、それも大事なことだけど、まだこの子は里から出てきたばかりで、冒険する準備できてないのよ。だから、そこから面倒見てくれないかって…』

『はぁ?』

 意味が分からない。

『姉さんから話し聞いて、もういてもたっても居られなくって、里から出てきちゃった♪ 今着てる革鎧と、このリュートしか持ってないけど、いいよね♪』

 呆然としてると、脇でルシアが頭を抱えてるのが見えた。

『こういう娘なのよ……だからお願い! 支度金も出すし報酬として指輪の鑑定もするから、面倒見てやって!?』

 貨幣の詰まった袋をドンとテーブルに置き、額をゴンとテーブルに叩きつけるように懇願する師を前にして『私』は了承することしか出来なかった…

 一つずつ解説しようか。

 ・どうやってシャインと知りあう? = エルフ繋がりでルシアの関係者にしてしまおう。

 ・お金が足りないよ? = ルシアが出せばいいんじゃない?

 ・指輪の鑑定どうしよう? = ルシアに(r

 まさに一石三鳥。(ルシアが何をしたと言うのか)

「わ~い、お小遣い貰っちゃった♪ リアルにもこんなお姉ちゃんが居ればな~」

「…ちゃんと返しなさいよ?」

 はしゃぐ鏡子に釘を刺す。すると鏡子は驚いたように、

「え? くれたんじゃないの!?」

 と返す。全くこの娘は…

 説明が面倒になったので、龍治に視線を向ける。すると龍治は心得たと言うように頷き、

「えーと、鏡子ちゃんに妹がいたとして、何かの用事でお金を立て替えてあげたとする。その後、鏡子ちゃんは妹さんにどうしてほしい?」

 と聞くと、鏡子は当然の様に、

「倍にして返させるけど?」

「わかってんじゃないの!」

 親しき仲にも礼儀あり、というか、あれ。

『んー…こっちの方が可愛いかなぁ、シャインはどう思う?』

『…アリシアさんはお綺麗ですから、どちらも似合うと思いますよ』

 ところ変わって古着屋。なにせ、ろくに着替えも持ってないというのだ。装備を整える以前の問題である。

 なぜ古着屋? お金持ちや貴族は一から服を仕立てるけれど、庶民はそうはいかないからよ。なにせ一着仕立てるのに銀貨10枚はする上に、日数もかかる。その点ここなら一着銀貨2枚くらいだし、持ち帰れるしね。

『む~、そんな連れないこと言わないで、シャインも一緒に見よ? あと「さん」はいらないから♪』

『……『私』は神官です。贅沢はできません』

 んー、と目を細めていたアリシアが、何かに気づいたようにポンと手を打つ、

 

「ねぇ、シャインが今着てるのって神官服? なんだよね? じゃあ周りから浮いちゃってるんじゃない? 着替えたほうがいいんじゃないかな~♪」

 むむむ!?

「あー、そうかも。現実で例えるなら巫女さんが巫女服? 着たままリサイクルショップ来てるようなものだろうね。周りの人は何事かと思うんじゃないかな」

 龍治も乗って言ってくる。た、確かにそれは浮いてる! というか写真撮られまくってる気がする!

 言われて今の自分の状態に気づき、服を見始める。ま、まあ『私』も興味無い訳じゃないし? 神官になった自分へのお祝いと思えば…

 5着買ったアリシアに、4着買った『私』が注意できるはずもなかった…