舞い降りる翼

 さて、解説しましょうか。

 と言ってもどこから…ああ、まずは私が気づいた龍治のマスタリング…GMとしての考え方ね。

 何度かゲームして分かった龍治の考え、それは…

 こいつ、見た目に反して派手なの大好きなのよ!

 だから強めのモンスターを出したがるし、隙あらば【突撃】しようとするし…

 私がGMした時の「やりすぎシナリオ」も、喜んでやってたしねぇ…はぁ、ある意味良かったのかしら?

 まあ、それを確信したのがグリフォンが出てきた時って言うんだから、私も鈍いわね。

 で、グリフォンと対峙した時、こうも思ったわ。

(あ、こいつ絶対【突撃】させるわね)って。

 その時ピンと来たの。【戦士】には【突撃】に対する有効な技があるって。

 そこら辺、GMをやるためにプレイヤーズ・ガイドとゲームマスター・ハンドブックを今一度じっくり読んだのが影響したのかしらね。

 その名も【構える】。【突撃】に対して【スピア】か【ロング・スピア】を構えて待ち受けるの。

 これを行うと【突撃】してきた相手に先に攻撃できるの。しかも、相手の勢いを利用するからダメージも倍。

 でもローデリックが持ってたのは、投げやすいように短くした【ジャベリン】だったから、本来は出来ないのよね。

 だから「お願い」したわけ。

 それに対する龍治の代替案が…

 ①:リーチが短いから【構える】方の先制ではなく【同時攻撃】とする。

 ②:素材は【スピア】より脆いだろうから、一度で折れてしまう。

 ③:本来は片手で行えるが、両手で構えなくてはならない。(盾が使えない)

 と言うものだったのよ。

 正直悩んだわ。でも何とか一矢報わないと、それこそ一人ずつ殺されていたでしょうし…逃げるとしても、帰り道は走れるような道じゃないから、ハーピー以外全滅って所でしょうね。

『ローデリック!』

 激突の次の瞬間『私』はローデリックに向け駆け出していた。

 もう息絶えてるかもしれない、でもまだ間に合うかもしれない、だから一瞬でも早く…!

『お嬢!』

『駄目だ、今しかない! ここで仕留めるぞ!』

『くっ、畜生!』

 一瞬気が逸れたディーンと、それを戒めるカイヴァン。

『ロー君、生きてるって信じるよ! ていっ!』

『見事だ、戦士よ。後は任せろ!』

 言いつつ矢を放つアリシアと、一瞬間を開けて突っ込むハーピー。 

 二本の矢と一個の石、そしてハーピーの鉤爪が傷ついた有翼獅子に襲いかかる!

 

「(コロコロ)(コロコロ)ゴメ~ン、マキ。当たったけど、ダメージ1点(涙)」

「(コロコロ)(コロコロ)う、こっちもディーンの3点だけ…」

 

 だが、まだ有翼獅子は生きていた。苛立たし気に周囲を睨み、それでも自分の不利は悟ったのか、翼を羽ばたき逃げようとする。

『光の神よ、この勇敢な戦士に加護を!』

 でも『私』はそんなことに構ってられなかった。ローデリックの傍にたどり着くと、跪いて全身全霊の力を込めて祈る!

 一瞬ローデリックの体が光り、それが消えた後には、目を覆いたくなる程のケガが跡形なく消えていた。

『う…主? はっ、あいつは!?』

『じっとしてなさい! 死んでてもおかしくなかったのですよ!?』

 起き上がろうとするローデリックを制し、代わりに後ろに視線を向ける。

 すると、有翼獅子が皆の攻撃を振り切り、空に羽ばたこうとしているのが見えた。

 皆が懸命に攻撃してるが、あまり有効打は無い様だ。無理もない…

 

「ていうか、AC17って何よ!? 【プレートメイル】着た戦士と同じじゃない!」

「モフモフのくせに硬過ぎるよ―!?」

「文句はゲームデザイナーの方に…」

 シナリオ考えたのは、あんたでしょうが!

 

 誰もが諦めかけたその時『ヒヒーン!』という馬の嘶きが聞こえた。

 『私』達が背後に庇っていた4頭の馬からではない、空に飛び上がった有翼獅子の更に上・・・からである。

 異常に気づいた有翼獅子が、上を振り向いたその瞬間、

 ゲシッ!

 という音と共に、強烈な蹴りが有翼獅子の顔面に決まった。

 深手を負い、更に不意打ち気味に加えられた一撃に、流石の有翼獅子も堪えることが出来ず、地面に叩きつけられた。

『馬? ああ、あの四本足の連中か』というハーピークィーンの言葉と、案内のハーピーが山の中腹を指さした理由が、ようやく頭の中で繋がった。

 彼女らにとっては、こっちの方が見慣れていたからだ。

 この翼を持った馬、天馬~ペガサス~というものを。

 

「…なるほど、そりゃ山に居てもおかしくないわね」

「むしろ平地にいる理由がないよね。あ? てことはこの子がシャインの馬になるの?」

「それは話の流れ次第ということで…」

 む? 上手く説得しろってことかしら。

 

 広場に降りて佇む天馬。大きく広がる翼のせいで錯覚していたが、よくよく見るとまだ小馬のようだ。視線の高さが他の馬達よりも低い。

 飛び立ちもせず、じっとこちらを見ている。何か言いたいことが…あら?

『まあ、ケガをしていますね。お礼と言ってはなんですが『私』に癒させてくれませんか?』

 と『私』は天馬に語りかける。するとゆっくりと天馬が近づいてきた。

『言葉分かんのかな…』

『我が師の教えによると、人間並みの知能を持つそうだ。…誰かさんより余程上だな』

『そんな馬鹿居るのか?』

『カイ君、皮肉言う相手は選ぼうよ…』

 外野うるさい。

『光の神よ、我が恩人に加護を…』

 天馬の体が光り、傷が消えていく。だが天馬は嬉しそうに嘶くものの、去ろうとはしない。

『どうしたのです? あなたはまだ子供でしょう、仲間の元に戻り…』

『こいつらは常に群れで行動する。一人で居るということは、…そういうことなんだろう』

 ハーピーが言いづらそうに言う。そう…あなたも孤児なのですね。

『では一緒に行きましょう。『私』はシャイン、これからよろしくね』

 『私』の言葉に、天馬の嘶きが一際大きく周囲に響いた。