戦の結末と、やりすぎ注意?

『いま喋ったのは貴様か?』

『はぁ?』

 口に出したら、近くに居たオークが怪訝な顔で反応してきた。…なるほど、そういうことか。

『いや、なんでもない』

『はぁ』

 少し間の抜けたやりとりをした後、改めて意識を魔剣に向けて、声には出さず「聞く」

『で、どうなんだ?』

『今の面白かったわよ?』

 そんな返事は望んでない。…まあ、そう来るなら、

『そういえば、今の戦闘でオーク達の武具を結構消耗したな。おや? ここに潰せば良い鋼になりそうな魔剣が…』

『わーっ! わーっ! ちょっ、まって、ごめんなさい! ちゃんと答えるから、潰さないで!?』

 ふん、最初から素直にすればいいものを。

『私の名前は【アトワイト】ご想像通り、魔剣の意思よ』

 やはり【知性ある魔剣インテリジェンスソード】ということか。面倒だな…

『なら、これからは『俺』を主と認めるか? それとも互いの支配権をかけて、意思の強さを果てなく競い合うか?』

 そう【知性ある魔剣】の面倒なところはここだ。こいつらは隙あらば使い手の意思を奪い、自分の都合の良いように動かそうと目論む。それが支配なのか殺戮なのかは魔剣によるが。

『ん~…競ってもいいけど、疲れるのよね。支配しても、じゃあ思い通りに相手が動くかっていうと、そうでもないし』

 …『俺』が聞いてた魔剣と違うな。

『だから、あなたに従ってもいいわよ? そうねぇ…とりあえず新しい立派な鞘が欲しいな♪ 宝石で飾ってあれば、なお良し!』

 「従う」という言葉の定義が崩れそうだ。

『そのうちな』

 と伝えて、やはり近くに落ちていた鞘を拾い、魔剣を収める。予備の武器には丁度良いだろう。…文句が聞こえる気がするが、無視だ。

「どんな魔剣か決める為にサイコロ振ったら、出ちゃった♪」

 照れ隠しも含めて可愛く言ってみる。

「これ、真輝ちゃんそのものじゃない?」

 失礼ね、私はもっと慎ましいわよ(本人視点)

 村の中央、いつもはバザーでも開かれていそうな広場に、村人全てが集められている。

 ある者は子供を抱きかかえて俯き、ある者は敵意を込めてこちらを睨みつけている。

 そして『俺』の前には、応急手当は済ませたが、装備を全て剥ぎ取られ、鎧の下に着る衣服のみとなった領主が跪いていた。

『約束通り、命は助けよう』

『…感謝する。【魔王子】よ』

 不安そうだな。いつ『俺』が掌を返すかわからないからか、仕方あるまい。

『この近くで、お前達を受け入れられそうな場所はどこだ?』

『…南西に3日ほど行った先にある、男爵の治める街ならば…はっ!? 貴様、まさか!』

『勘違いするな。今はまだ、攻めはしない』

 そう言い、次に『俺』はガグに向かって指示を出す。

『村人全員に3日分の食料を配り、受け取った奴から南西に送り出せ』

『なっ!? 若!!』

『命令だ』

 有無を言わせぬ口調で告げる。それを見ていた領主のポカンとした表情は、中々の見ものだった。

『…重ねて感謝する【魔王子】アンリよ、この借りはいずれ戦場で返そう』

 最後まで残った領主が礼を示す。…『俺』の真意を知ったらどう思うやら。

『だといいがな』

 そう答え顎をしゃくる。これ以上の会話は無意味だからな。

『では、御免』

 言いつつ敬礼をし、去ってゆく領主。さて、残るのは…

『…………』

 無言だが、不満を隠す気もない表情でこちらを見るガグと、

『ねえ、なんで開放しちゃったの? 普通は奴隷とかにするんじゃないの?』

 と、無邪気に聞いてくる魔剣が1本か。やれやれ…

『さて、説明しようか』

 場所を変えて元領主の館。立派な机から、執務室だったということが伺える。

『若! どういうことですかい! 全員引っ捕らえて奴隷にしときゃいいものを、これは魔王様に対する反逆とも言えやすぜ!』

 開口一番怒鳴り散らすガグ。反逆って…お前そんな忠誠心あったっけか?

『あのな…まだ言うことを聞くゴブリンやコボルドでさえ、増えたらたまに間引かなきゃならんのに、いつ反抗するか分からない人間を900人も連れてって管理できるのか?』

『う…例えば重労働の使い捨てにするとか』

『それで死んだらアンデッドにして更に使い潰す、か。バカバカしい、『俺』は地下都市を腐臭と疫病に塗れさせる気はない』

 『俺』の様な【ハーフ・デビル】ならまだいいが、他の闇の種族のほとんどに疫病は致命的だ。感染症甘く見てんじゃねーぞ?

『ガグ、貴様ら【鋭き牙】一族は何人だ?』

 唐突な問いに、ガグは目をパチクリしながらも答える。

『へぇ…今回連れてきたのが300で、都市に居残ってる女や年寄り、ガキどもを含めると1000チョットってところでやすね。それが何か?』

『今回襲った村が900で、避難先の男爵の街が…』

 

「真輝ちゃん、どのくらい?」

「まだ決めてないけど、3~4000くらい? 【イースト・エンド】よりちょっと小さいのを考えてるわ」

 あら? そうすると領主ログナーも貴族になるのかしら? あとで龍治と考えようっと。

 

『4000とすると、大体4分の1だな。ではガグ、【鋭き牙】一族を頼りに、ろくに食料も持ってない300近いオークが難民として来たら、受け入れられるか?』

『無理っす! 入れる場所はあったとしても、食料が持ちやせん!』

『だろうな。では、族長のお前はどうする?』

 ガグはしばし考え、決を下す。

『同族には申し訳ねえが、恨みを残さねえように皆殺しでやすね。…はっ!? まさか若…』

 それには直接答えず『俺』は椅子から立ち上がり、背を向ける。

『魔王は『俺』に言った。光の種族に我らの恐ろしさを思い知らせよ、とな。だが、ただ襲い殺すのが闇の全てではない。同胞を見捨てられない光の種族の矜持、それすらも利用して一手打たせてもらった。さあどうする? 男爵、そしてその後ろに居るであろう人間の【王】よ、次はそちらの番だ』

 自然と口がにやけ、次第に大きな笑い声に変わっていく。…ガグはそれを恐れているようだが、

『いよっ! この鬼、悪魔!』

 腰に差している魔剣は茶化してきた。フッ、そんなに褒めるな。

「はい、今回のシナリオはここまでね。お疲れ様」

 私の〆の言葉に龍治は一礼して、

「お疲れ様、真輝ちゃん。ありがとう、すっごく楽しかったよ!」

 改めて龍治の賞賛が私に降りそそぐ。うん、それはいいんだけどね?

 適当に答えつつ、私は今回自分が龍治に与えたものを反芻した。

・種族:人間→ハーフ・デビル(全能力値+2、他に特殊能力多数)

・ダークメタル装備一式(オリハルコン相当)

・職業:黒騎士1/魔剣士1

・身分:魔王子

・部下:オーク一族(約1000人)

・魔剣アトワイト:インテリジェンス・ロングソード+2(特殊能力あり)

・戦利品:プレートメイル+1、シールド+1

・大きめの村の、ほぼ全資産(価値はこれから算定)

 ………ちょっとやりすぎたかしら? あははは…(乾ききった笑い)