義務って辛い

「税金だよ、税金!」

 龍治が滅多に見せない輝かんばかりの笑顔で言う。…前に見たのはいつだろう、小学校の遠足の時だったかしら(軽い現実逃避)

「………ぜいきん?」

 自分では確認できないが、この時の私の表情は「仏頂面」と言う言葉が良く似合うものだっただろう。

「え、社会のインフラやサービスを維持する為に、所得や資産に応じて徴収…」

「だから意味は知ってるわよ! 取るんでしょ!? 私の、シャインの、なけなしの収入から! 払わないと犯罪なんでしょ!?」

 半ばやけになって言う。おっと、少し声が大きかったかしら、静かに静かに。…でもお金取られるのよね、せっかく翌日の買い物の事を楽しく考えてたのに。

「う~ん、でも社会のシステムを表現するには外せない要素だし、ルールブックにも「税金はしっかり取ろう。払いたくない? 荒野にでも放り出せ!」って書いてあるし」

 世の中って厳しい。

「う~…わかったわよ。で? いくら払えばいいの? 5%? 10%?」

 それが例えどんな少額でも、気持ちの良い物ではない。…お父さん達の苦労がちょっと分かった気がする。

「嫌だなぁ真輝ちゃん。そんなに少なくないよ、25%だね♪」

「にじゅうご!? よんぶんのいち!? そんなに持ってかれるの!?」

 どうやらイーストエンドはブラック企業…いや、ブラック領地だったらしい。

「え、日本だってその位だよ? 累進制で5%~40%の幅が有るだけで」

 …なるほど。稼げば稼ぐほど持っていかれる分が多くなるのね。お金持ちが脱税したくなる気持ちが分かるわ…

「え~と、一人当たり金貨が50枚で、銀貨は250枚。銅貨が500枚だから…計算しづらいわね。えーと、こういう時は一番価値が低い銅貨に合わせて…」

 持っていかれるお金の計算って、こんなにやる気出ないものなのね…

「銅貨にして8000枚の25%だから…(ポチポチ)銅貨2000枚分かぁ。じゃあ…銅貨全部と銀貨150枚ね。はぁ…」

 溜息つきつつキャラクターシートを訂正する。まあ沢山あった銅貨を片づけられたと思えば…

「えー…ここで真輝ちゃんに悲しいお知らせです」

「なによ、改まって。もう十分悲しいわよ」

 キッと龍治に視線を向ける。そんな私に龍治は「ご愁傷様」とばかりに手を合わせ、

「シャインは神官だよね」

「…そうね」

 何が言いたいのか。

「日本でも、神社やお寺ってお賽銭集めてるよね」

 …まさか、

「お布施の時間です」

「やっぱりいぃぃぃぃ!」

 呻いて頭を抱える。もうお金払ったじゃない! まだ払えって言うの!?

『司祭様、これを…』

 と言って『私』は袋を差し出す。中身は銀貨が80枚。これは神に仕える者達が、己自身に課している「十分の一税」と言われる物だ。領主様からも神殿への補助金は出ているが、それだけでは到底足りない。

『すまぬな、シャイン。そなたに光の神の加護が有らん事を。…儂にもっと力が有ればいいのだけれどな』

『いえ、むしろ私は嬉しいのです。今までのご恩を、少しでも返す事が出来て』

 孤児であった『私』が、こうして生きてこられて神官になれたのも、神殿と司祭様達のおかげだ。その恩を返せて、それが次の者達の糧となるなら、こんなに嬉しい事は無い。

『司祭様、あとこちらを…』

 言いつつもう一つの小袋を出す。こちらには金貨が…

『これ以上は受け取れんな。いいかい、シャイン。冒険者となった以上、義務を果たした後は、自分と仲間達の為に尽くさなくてはならない。装備を整え、知識を得、苦難に備える。それを怠れば、結局多くの人が不幸になってしまう。努々忘れてはならないよ?』

 差し出した手を抑え、優しく語られる。…やはり、この方は『私』の「父」だ。

『…はい。仲間たちと相談し、次に備えます。司祭様にも光の神の加護が有りますように』

「う~~、80万円稼いだら28万も持ってかれた…しかも中世も現実も大差ないって、酷くない!?」

「…僕は二人のキャラの差の方が酷いと思うなぁ」